象徴派の周囲

象徴派に関する雑記、メモ、翻訳、引用など

ドイツ象徴派

アルバン・ベルク『ルル』

これは、ある人々によれば、二十世紀最高のオペラらしい。そういうものに出会えただけでも、ヴェデキントの戯曲を読んだ価値はあった。 主役のクリスティーネ・シェーファーは、シェーンベルクの歌曲などでは「知的なリリックソプラノ」という感じだったが、…

パプスト『パンドラの箱』

1928年のサイレント映画。この一作で、ルイーズ・ブルックスは映画史上にその名をとどめることになる。 www.youtube.com じっさいのところ、この映画もまたそれなりに忠実に原作を追っているけれども、なんといってもヴェデキントの戯曲が、およそ劇的なおも…

ヴァレリアン・ボロフチク『ルル』

思いがけず袋小路のようになっている「ルル」関連のあれやこれやだが、あまりこういうことにかかずらっているといつまでたっても埒が明かないので、気になるものだけさっさと片付けるとしよう。ボロフチクは私のお気に入りの映画作家で、彼に「ルル」を映画…

F. ヴェデキント『地霊・パンドラの箱 -- ルル二部作 -- 』

岩淵達治訳の岩波文庫。この作品のふしぎな魅力がどこからくるかといえば、それはおそらくポルノグラフィックということでけりがつくのではないかと思う。ポルノに特徴的な、背徳と官能と残酷とが、この戯曲にはふんだんに見出せるのだ。そしてもうひとつの…

池内紀編訳『ウィーン世紀末文学選』

本書にいわゆる「世紀末」とは、1890年代からナチスドイツによるオーストリア併合(1938年)までを想定しているらしいが、これはちょっと下限を長く取りすぎているような気がする。そのせいかどうか、収録作品の選択もどこか散漫な感じで、全体として焦点が…

ホフマンスタール『チャンドス卿の手紙 他十篇』

私としては、長いことドイツ語で親しんできた「道と出会い」以降の三篇を、日本語でもっと正確に理解したい、と思って買った本だが、最初から順を追って読んでみて、ホフマンスタールという不世出の天才がいかに自分と気質的に共鳴するタイプの作家であるか…