小説
象徴派の時代に続くのがアール・ヌーヴォーで、それの発展形としてアール・デコというものが考えられ、同時にその中心地はヨーロッパからアメリカへ移る。その後のアメリカ文化はジャズからポップカルチャーへと進むことになるだろう。いっぽうヨーロッパで…
先日、初めて閃輝暗点なるものを体験した。視界の端にギザギザの円が見える現象だが、それで思い出したのは、作家の芥川龍之介が短篇「歯車」のなかで、この現象を描いていることだ。彼にとって閃輝暗点はたんなる病理的現象ではなく、「死」を暗示する予兆…
本書にいわゆる「世紀末」とは、1890年代からナチスドイツによるオーストリア併合(1938年)までを想定しているらしいが、これはちょっと下限を長く取りすぎているような気がする。そのせいかどうか、収録作品の選択もどこか散漫な感じで、全体として焦点が…
筑摩の古い全集本で「大正小説集」というのを読んでいて、ちょっと引っかかったのが素木しづ子という女流作家だ。いっときは樋口一葉の再来とまでいわれたらしいが、24歳で夭折した。「大正小説集」に収められているのは「三十三の死」という作品で、そこに…
これはすばらしい本だ。私はこれを読んでラフォルグに対する考え方がすっかり変ってしまった。これまでは、ラフォルグといえばどうもあまりぱっとしない詩人という印象で、たいして人気があるようにはみえず、ラフォルグラフォルグといって持ち上げる人も見…
サロメの系譜といった内容の本は何冊かあるようで、いずれまとめて読んでみたいが、サロメを扱った文学作品のうち、わりあい早い時期に出たもので、逸することのできないのがフローベールの「ヘロヂアス」だ。この恐るべき物語を、フローベールはいったいど…
あらすじ妻に死に別れてブリュージュへやってきた男。彼はこの死んだ町に住み、町と同化しつつ衰滅することに、倒錯した癒しを見出している。五年後、彼は亡き妻と瓜二つの女に出会う。女は芝居の踊り子。やがて二人は半同棲生活を送るようになる。男はあく…
象徴主義といえば、詩や絵画が中心で、小説はあまりぱっとしないようだ。象徴主義小説というので、なんとなく人々が思い出すのは、ロダンバックの『死都ブリュージュ』くらいではないか。有名なユイスマンスの『さかしま』は、象徴派を広く一般に知らしめた…