象徴派の周囲

象徴派に関する雑記、メモ、翻訳、引用など

美術

生田耕作と象徴主義

生田耕作といえば世間ではシュルレアリスムの研究者として知られている。たしかに彼の訳したブルトンの「第一宣言」はすばらしい。まるでブルトンの霊が生田に憑依して筆記させたかのようだ。しかし私が本当に生田をすごいと思ったのは、『ヴァテック』に寄…

ハンス・H・ホーフシュテッター『象徴主義と世紀末芸術』

1965年に原著が、1970年に訳書が出たもの(種村季弘訳、美術出版社)。訳者のあとがきによれば、当時は日本でもアール・ヌーヴォーがちょっとした流行だったらしい。著者のホーフシュテッターはアール・ヌーヴォーの研究家でもあるので、本書でもそっち方面…

種村季弘と象徴派

ホーフシュテッターの翻訳者である種村季弘は、映画評論の分野でも活躍した。ところでそのホーフシュテッターは、象徴派の未来を映画のなかに見出している。そういう事情があるので、種村季弘にはもしかしたらホーフシュテッターの理論を応用した、象徴派の…

ピエール=ルイ・マチウ『象徴派世代 1870 - 1910』

翻訳者としての窪田般弥の力量はかなりのものだと思うが、本書の訳はちょっと甘いし、索引などを見てもどうもあまり使い心地がよくない。絵画史的なことを除けば、読者が知りたいのは個々の作品の原題とその訳なので、本書のように原題を故意に(?)伏せて…

悪魔とオナニズム

1996年から1997年にかけて開催された「ベルギー象徴主義の巨匠展」の図録を眺めていたら、フェリシアン・ロップスにかなりのページが割かれているのに気がついた。ロップスは、日本でもまとまった画集が出ているくらいで、わりあい人気がある画家だと思うが…

ジョン・ミルナー『象徴派とデカダン派の美術』

1976年にパルコ出版から出たもの。訳者は吉田正俊氏。この本は私には画期的だった。廉価版であり、どこの本屋でも置いてあって、しかも中を開けば珍奇な図版のオンパレードという、他に類を見ない本で、私はこれを立ち読みすることで、象徴派絵画に関する基…

ローデンバック『死都ブリュージュ』

あらすじ妻に死に別れてブリュージュへやってきた男。彼はこの死んだ町に住み、町と同化しつつ衰滅することに、倒錯した癒しを見出している。五年後、彼は亡き妻と瓜二つの女に出会う。女は芝居の踊り子。やがて二人は半同棲生活を送るようになる。男はあく…

カルロス・シュヴァーベ

私が最初に象徴派の絵を知ったのは、高校のころ買ったボードレールの対訳詩集の表紙においてだ。ペンギン版のその本に使われていた絵は、じつに衝撃的だった。この一枚で、Carlos Schwabe という画家の名前は、私の記憶に深く刻みつけられたのである。 たし…