翻訳
この本は、『海潮音』と『牧羊神』、および雑誌に出ただけで単行本には収録されなかった拾遺篇からなる。本書を通読して思ったのは、やはり訳詩集としては『海潮音』のほうが『牧羊神』よりもすぐれていることと、拾遺篇にもすぐれたものが少なくないという…
けがれなく 健やかにして うるはしき けふのよき日よ わがために 酔ひし翼の ひと打ちに 砕かばくだけ ひと知らで かたく凍りし みづうみに 霧氷降りしき 遁れざる 羽がきのあとの 透き見ゆる その氷をぞいにしへの 白鳥なりし おのが身の けざやかなれど 望…
岩波文庫の新しいマラルメ詩集。すごい労作だとは思うし、これを出した岩波書店はさすがというべきだが、どうもこれを読んでいると、自分は今までマラルメを過大評価していたのでは? という気になってくる。それはともかくとして、トルストイの芸術論以来、…
広義の頽唐派は象徴派を含む。そしてこの頽唐、デカダンという言葉は、もとは貶下的なものだった。世人は「この唾棄すべきデカダン奴が」という意味合いでこの言葉を使った。しかし、使われたほう、すなわちデカダンたちは、いっこうに痛痒を感じなかったら…