象徴派の周囲

象徴派に関する雑記、メモ、翻訳、引用など

アンリ・ペール『象徴主義文学』


原本は1976年、訳本は1983年の刊行。

文庫クセジュにおいて、前に取り上げたシュミット教授の本と入れ替えになったもの。教授のものが、大学での講義のような体裁をもっているとすれば、こっちはもっとくだけた、一般向けの講演といった趣がある。ほとんどが雑談のようなもので、象徴派に興味のある人にはじつに楽しい読み物になっている。



本書においては、要約はあまり意味をなさない。というのも、著書の意図するところは、この雑然たるアネクドートの集積から、読み手が自由に自分なりの象徴主義理解を引き出すことにあると思われるからだ。こういうと、いかにも無責任な本に思われるかもしれないが、もちろんそうではない。本書の記述をきちんと踏まえている限り、概念的には象徴主義の圏外に出たくとも出られない、という「囲い込み」が巧妙になされている。われわれはその「囲い」のなかで、めいめい好きなように自分の畑を耕すだけのことだ。