象徴派の周囲

象徴派に関する雑記、メモ、翻訳、引用など

F. ヴェデキント『地霊・パンドラの箱 -- ルル二部作 -- 』


岩淵達治訳の岩波文庫。この作品のふしぎな魅力がどこからくるかといえば、それはおそらくポルノグラフィックということでけりがつくのではないかと思う。ポルノに特徴的な、背徳と官能と残酷とが、この戯曲にはふんだんに見出せるのだ。そしてもうひとつの要素として、淫楽殺人に代表される猟奇ということがある。ポルノと猟奇、それにドイツ世紀末特有の病んだ雰囲気、そういうものがごちゃまぜになったところに、この戯曲の魅力の源泉があると思う。

それともうひとつ、私がおもしろく思うのは、この作品を核として一種の磁場が形作られているようにみえることだ。「ルル」を中心にした精神史というものが考えられるのである。そこには私の興味を惹くものがいくつもある。たとえば、デーメルの詩作品などもおそらくこの磁場と無関係ではない。

ただ、話をあまり大きくする前に、とりあえず押さえておきたい作品として、アルバン・ベルクのオペラと、ルイズ・ブルックス主演のサイレント映画、それにポーランドのワレリアン・ボロフチクが撮った映画がある。幸いなことに、これらはすべて動画サイトで視聴できる。また気が向いたら感想など書いてみたい。