象徴派の周囲

象徴派に関する雑記、メモ、翻訳、引用など

ヴァレリアン・ボロフチク『ルル』


思いがけず袋小路のようになっている「ルル」関連のあれやこれやだが、あまりこういうことにかかずらっているといつまでたっても埒が明かないので、気になるものだけさっさと片付けるとしよう。

ボロフチクは私のお気に入りの映画作家で、彼に「ルル」を映画化した作品があることを知った私は、さっそく探してみた。メジャーな動画サイトでも見られるようだが、こういうのはすぐに削除されるので、比較的安定していると思われるのを次に紹介しておこう。


https://www.erogarga.com/lulu-1980-walerian-borowczyk/


エロ関連のサイトなので、あまりお勧めではないのだが、まあ只で見られるだけありがたい。

比較的忠実に原作を追っているようだが、それだけに筋書きのつまらなさが強調されてしまい、ボロフチクならではのおもしろみがほとんど感じられなかった。なによりもルル役の女優があまり私の好みではないのだ。そこらへんのレヴューに出ているような踊り子をひっぱってきて、そのまま映画に出演させたようなところがある。

けっきょくのところ、いちばんの見どころは、最後の切り裂きジャックによる殺害の場面だろう。こんなところにしか見どころがないというのも困ったものだが、ウド・キアはさすがの名演で、伯爵令嬢ゲシュヴィッツ役の女優もかなりの怪演で見るものを惹きつける。

なんでボロフチクが1980年にこういう文芸ものを作ったのか、よく分らないし、この作品で何をしたかったのかも不明だ。その翌年に作られた「ジキル博士と暴行魔ハイド」というのが、スティヴンソンの原作を完膚なきまでにぶちこわした八方破れの怪作で、こういうものにボロフチクの本領がより効果的なかたちで発揮されているように思う。

映画は換骨奪胎とか脱構築とか、そういった方向でこそ成功を期待できるので、原作べったりの文芸ものではダメなのだ。