象徴派の周囲

象徴派に関する雑記、メモ、翻訳、引用など

書物

マラルメの新訳と旧訳、つけたり戯訳

岩波文庫の新しいマラルメ詩集。すごい労作だとは思うし、これを出した岩波書店はさすがというべきだが、どうもこれを読んでいると、自分は今までマラルメを過大評価していたのでは? という気になってくる。それはともかくとして、トルストイの芸術論以来、…

窪田般彌『詩と象徴』

1977年に刊行されたもの(白水社)。本書で扱われているのは、「広い意味での象徴主義的風土に生きた文学者」たちである。広義の象徴派といってもいいだろう。まず蒲原有明。この人の『有明集』は最低限読んでおかないと、日本の象徴主義について語ることは…

ジョン・ミルナー『象徴派とデカダン派の美術』

1976年にパルコ出版から出たもの。訳者は吉田正俊氏。この本は私には画期的だった。廉価版であり、どこの本屋でも置いてあって、しかも中を開けば珍奇な図版のオンパレードという、他に類を見ない本で、私はこれを立ち読みすることで、象徴派絵画に関する基…

アンリ・ペール『象徴主義文学』

原本は1976年、訳本は1983年の刊行。文庫クセジュにおいて、前に取り上げたシュミット教授の本と入れ替えになったもの。教授のものが、大学での講義のような体裁をもっているとすれば、こっちはもっとくだけた、一般向けの講演といった趣がある。ほとんどが…

窪田般彌『日本の象徴詩人』

1963年(昭和38年)に紀伊国屋新書で出たもの。本書で扱われているのは、上田敏、蒲原有明、北原白秋、三木露風、三富朽葉、萩原朔太郎、日夏耿之介、小林秀雄、吉田一穂の九人。ところで、これらのうち、フランスのサンボリスム精神に忠実な、真の意味での…

アルベール=マリ・シュミット『象徴主義 -- マラルメからシュールレアリスムまで --』

1942年に刊行されたもの。邦訳は1969年(白水社、文庫クセジュ)。これは象徴主義について手軽に要点のみ知りたいと思う人には、まったく役に立たない本だ。いや、ほんとうに、ここには象徴主義について、積極的なことは何一つ書かれていない。著者は、象徴…

中村隆夫『象徴主義と世紀末世界』

今年(2019年)の8月に出たばかりの本だが、完全な新著というわけではなくて、根幹をなす部分は1998年に出た『象徴主義 モダニズムへの警鐘』をそのまま使ってある。第I部の10章と11章とが、新たに付け加えられた部分で、ページ数でいえば60ページ余り。以下…