象徴派の周囲

象徴派に関する雑記、メモ、翻訳、引用など

宇佐美斉『象徴主義の光と影』


関西の研究者たちによる共同研究(1997年、ミネルヴァ書房)。21篇の論文が並んでいるが、私の関心に触れてくるものはほとんどない。というのも、ここで取り上げられている画家や文学者は、象徴派プロパーではなく、その周りを固めている守護神のような人々ばかりなのだ。もっとも、象徴主義の歴史においては、狭義の象徴派よりも、援護射撃に回っている守護神たちのほうが偉いのは確かだ。本書の3ページにも、狭義の象徴派について、「そのごく少数を除いてはもはや今日では再読に耐えないほどの群小詩人ばかりであった」と書かれている。

私としては、その群小詩人たちの右往左往に関心があるんだが……

というわけで、本書はみごとなまでに「象徴派」不在の象徴主義研究書になっている。私が本書から得たものはといえば、ゾラに『夢』と題された小説があって、おもしろそうなことと、フェリックス・フェネオンという人物が象徴派の運動においてけっこうな働きをしたことくらいのものだ。

ここで明らかになるのは、1997年の時点においても、象徴主義に真に関心をもっているフランス文学研究者はほとんどいなかった、という事実である。今ではその数はもっと減っているに違いない。

まあそれはそれでいい。私はといえば、「今日では再読に耐えないほどの群小詩人」たちの墓守になって余生を過ごすつもりだ。